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2025 6/12 (THU)

DAY 1

ユースたちの希望の種まき Planting Seeds of Hope

6/12 ユースたちの希望の種まき © KAORI NISHIDA

ジェーン博士の言葉を受け取り、未来を変える一歩を踏み出す若者たち

ジェーン・グドール博士来日記念講演会「Inspiring Hope Through Action 希望は行動の中に、ジェーンから受け継いで」。イベント初日のテーマを「ユースたちの希望の種まき──」とし、若者をメインオーディエンスに迎え実施しました。

地球温暖化、生物多様性の喪失、広がる格差、そして胸を締めつけるような戦争や暴力——あまりに大きな問題を前に、未来に希望を持てず、「自分に何ができるのだろう」と立ちすくむ人は少なくありません。でも、そんな時代だからこそ届けたいストーリーがあります。 ジェーン博士が創設したユースアクションプログラム「Roots & Shoots」を通して、「希望は、行動の中にある」というメッセージに乗せて。

ジェーン博士の基調講演、ユース3名によるストーリーテリング、そして会場ではR&Sのワークショップの様子をダイジェスト!

17:00

根本さんによるオープニングトーク

根本さんによるオープニングトーク

オープニングトークを飾るのは、国連広報センターの根本かおる氏。彼女はジェーン・グドール博士の影響力とその国際的な活動を強調し、こう話しました。

「ジェーン博士は、2002年に当時の国連事務総長コフィ・アナンにより国連平和のメッセンジャーに任命されました。毎年9月21日の『国際平和デー』を記念するセレモニーにも参加され、若者たちとともに、より良い世界を作るための方法を話し合ってきました。

国連職員として、そして一人の人間として、『私たち一人ひとりが違いを生み出し、世界を変える第一歩を踏み出せる』というジェーン博士の言葉を、私は強く信じています。今日という日を通して、決意、行動、そして連帯の力を振り返る貴重な機会となり、私たちがどのように持続可能な未来に向けてステップを踏み出せるのかを探っていきましょう」

17:10

ジェーン博士基調講演

ジェーン博士基調講演
ジェーン博士基調講演

大きな拍手の中、会場へと一歩を踏み入れたジェーン博士。小学生から大学生まで、120名のユース、そして100人近くの大人たちの熱気で会場が包まれる中、ジェーン博士が壇上に立った瞬間、会場は穏やかな静けさをまとう。そして、ジェーン博士は幼少期を振り返りながら、自身が夢をつかむまでのことから語り始めました。

「10歳のとき、私は決めました。『アフリカに行き、野生の動物たちと一緒に暮らし、彼らについて本を書こう』と。しかし、誰もが笑いました。『アフリカは遠いし、あなたはただの女の子。そんなことはできない。もっと現実的な夢をみたら?』と。80年前は、女の子はそういうことをしないのが定説でした。

でも、私の母は違いました。『本当にやりたいなら、すべてのチャンスを活かして、諦めずに頑張ればきっと道は見つかる』と。その言葉を胸に、私は決して夢を諦めませんでした。お金がなかったので、秘書課程を取ってロンドンで働き、ウェイトレスとしても働いてアフリカへ行くためのお金を貯めました。そうして、私はケニアへと渡り、チンパンジーと過ごす機会を得ました。

だから、私も同じメッセージを皆さんに伝えたいと思います。もし本当にやりたいことがあれば、誰にも笑われて諦めさせられないでください。本当にやりたいなら、必ず方法は見つかるはずです」

博士は続けて、チンパンジーがどれほど人間に似た感情を持っているか、そして彼らの社会的な側面についても触れました。

「私たちに似ているところは、単に道具を作ったり使ったりするだけではありません。彼らは互いにコミュニケーションを取るとき、キスをしたり、抱きしめたり、手をつないだり、互いに安心させるように背中をさすったりするのです。それが何を意味しているのか、私たちは完全に理解することができました。なぜなら、それは私たちと同じ感情を伝えているからです」

他にも、ジェーン博士はぬいぐるみの小さな動物のお友達を紹介しながら、動物たちの知的で面白い行動を紹介した他、環境破壊を止めるために、人々の暮らしに寄り添ったプログラム「TACARE(タカリ)」や、1991年にタンザニアで始まったRoots & Shoots(ルーツ&シューツ)のことを話ました。

「私たちが毎日生活する中で、必ず地球に何らかの影響を与えていることを理解することから始まります。そして、私たちはどんな影響を与えたいかをも選ぶことができます。そのために、人間や動物、環境を助けるプロジェクトを選ぶのです。

ルーツ&シューツは日本でも急速に成長しており、世界中で広がり続けています。若い人々が問題を理解し、その問題を解決するために行動を起こせるようになると、ものすごいパワーが生まれるのです。それが、私が希望を抱く理由です」

17:45

アイスブレイクゲーム

アイスブレイクゲーム
アイスブレイクゲーム
アイスブレイクゲーム

ジェーン博士の言葉の余韻に浸りながら、参加した学生は新聞紙からできた葉っぱに、心に残った言葉や希望を感じた言葉を書いてもらいました。

ある小学生の参加者は「Don’t give up just because people tell you. Achieve what you want to(人になんて言われようと、諦めない。自分がつかみとりたいものをつかむ)」と書き、こうした130枚近くの言葉が集まり、葉っぱがたくさん色づいた大きな木のアートになりました。

一人ひとりの声や思い、活動が大切であり価値があります。そしてそれが集まると、こうしてどんどん大きくなっていく──そのことが目に見えるかたちで、そっと立ち現れた瞬間でした。

18:05

ユースによるストーリーテリング

そして、行動を起こす上で大きな力になるのが、知ることやインスピレーションを得ることです。ジェーンさんの言葉からインスピレーションを得た次は、同世代のみんなからインスピレーションを。この日、3人のスペシャルなスピーカーがストーリーテリングをしてくれました。

この日のストーリーテリングは、自分が取り組もうとしている問題への動機を語る「ストーリー・オブ・セルフ」、みんなが思っているかもしれないことを代弁し、つくりたいコミュニティについて語る「ストーリー・オブ・アス」、そして、アクションを起こすために、今すべきこと、したいことを伝える「ストーリー・オブ・ナウ」へと続く「パブリック・ナラティブ」の方法で準備してくれました。3人が語ってくれた内容を、少しだけ紹介します。

ユースによるストーリーテリング 岡崎 礼奈
Roots & Shoots Yokohama International School

Rena Okazaki 岡崎 礼奈


横浜インターナショナルスクールでルーツ&シューツの活動をしている9年生、岡崎礼奈さん。「むかしむかし、世界の不思議に心を躍らせる、ひとりの小さな女の子がいました。本が大好きで、母はそんな私に、力強く生きた女性たちの物語をたくさん聞かせてくれました。『あなたにも、きっと何か大きなことができる』——そんな願いを込めて」と、ジェーン博士の絵本との出会いから話を始めました。

その後、学校でルーツ&シューツを立ち上げ、カフェテリアのゴミのリサイクルを変えるまでの歩みを語ってくれました。最初に先生へ提案したとき、「いいアイデアだけど、正直、生徒は1カ月ももたないと思う」と言われたこと。そのときの恥ずかしさや悔しさ、そして「絶対にやり遂げたい」という思いが芽生えたこと。「子どもには無理」と言われてきたすべての子たちのために、証明したいという気持ちがあったといいます。

彼女の歩みは、ジェーン博士の物語とも重なります。うまくいかず不安になったとき、母に言われた「やる価値のあることなら、ちゃんとやる価値がある」という言葉が支えになったそうです。そうして彼女は、学校のリサイクルや廃棄物の問題に、真っ直ぐに向き合ってきました。

あれから4年。今も毎週欠かさず、仲間とともにルーツ&シューツの活動に取り組んでいます。今では低学年の子どもたちも加わり、校内では50人以上の生徒がそれぞれのルーツ&シューツ活動を展開。保護者や先生も巻き込み、持続的なムーブメントとなっています。

最後に彼女はこう語りました。「ルーツ&シューツに出会えたことで、私はもう“変化を願うだけの人”ではありません。“変化を生み出す人”として生きていこうと決めました。これからの人生も、ずっと。ジェーン博士——心から意味のあることに、私を導いてくださって、本当にありがとうございます」

ユースによるストーリーテリング 江澤 哲哉
Regenerative Designer

Tetsuya Ezawa 江澤 哲哉


次に登壇したのは、高校3年生でリジェネラティブ・デザイナーの江澤哲哉さん。小学生の頃、あまりにも暑い日々や異常気象を前に、環境問題に関心を持ち始めたといいます。そして、学生時代に学校へいけなくなったこと、NHKの気候変動の番組を見て不安で涙が溢れたこと、そして勇気を出してFridays for Futureに参加したことを語ってくれました。

「中2のある日、Fridays for Futureのオンラインミーティングに参加し、カメラは怖くて付けられず、チャットで想いを綴りました。その後、横浜で行われた小さなマーチに参加しました。OUR HOUSE IS ON FIRE、私たちの家は燃えている、と描いたダンボールを用意して、初めて横浜を歩きました。気候変動が不安なのはひとりじゃないんだ。って感じられました。行動すぎるのに早すぎるなんてない。大人になるまで待たなくてもいいって言葉を胸に活動を始めました」

それから3年、地球にやさしい農場を訪問したり、映画の試写会や気候マーチを開催したりする中で、「何か変わらないといけない」と感じ、「怒りや焦りを伝えるのではなくて、もっと、根っこから変えたい。足元から、地に足つけて向き合いたい。自分が解決策に携わりたい」と思うようになったとか。現在、人間が生きることで地球を再生させるリジェネラティブな生き方を探究していると言います。

「人間が地球を壊す存在じゃなく、むしろ豊かにする存在になれたら——そんな希望を持っています」

ユースによるストーリーテリング 沖田 美怜
Dream Builders

Mirei Okita 沖田 美怜


そして最後に登場したのは、小学6年生で、小中学生による環境保護チーム「Dream Builders」を立ち上げた沖田美怜さん。今では多方面で精力的に活動する彼女ですが、そこに至るまでには、さまざまな葛藤や迷いがあったと語ってくれました。

幼い頃は、大人の期待に応えようと懸命に努力する毎日。小学校2〜3年生の頃には、「自分が何を言っても、きっと何も変わらない」と感じていたといいます。
それでも少しずつ、「やりたいことを見つけて、自分で動ける人になりたい」と思うようになった——その心の変化を、彼女はとても丁寧に伝えてくれました。

そんなある日、焼き魚の中に混ざっていた小さなマイクロプラスチックを見つけたことが、彼女を大きく動かしました。環境問題に強い関心を抱いた彼女は、夢中で調べ、知ることの大切さを実感。「自分も行動したい」という思いが芽生え、「Dream Builders(夢をつくる人たち)」を立ち上げる原動力になったのです。

「同世代の子どもたちが、もっと自由に生きられるような活動がしたい」——そう語る美怜さんのチームでは、デザインが得意な子、スピーチが得意な子、リサーチが好きな子など、それぞれの得意を活かして活動しています。その中で彼女は気づきました。ちゃんとチャンスさえあれば、誰もがリーダーとして輝けるのだと。

共感・理解・行動を大切に——思いやりのあるリーダーシップの本質に触れる、美怜さんのまっすぐな言葉が、力強く心に深く届きました。

18:45

Roots & Shoots ワークショップ

Roots & Shoots ワークショップ
Roots & Shoots ワークショップ
Roots & Shoots ワークショップ

そして最後のプログラムは、「ルーツ&シューツのワークショップ」。このワークショップでは、ジェーン・グドール博士と3名の若者によるストーリーを受けて、参加者が「やりたい!」という気持ちを、具体的な地域アクションにつなげるための4ステップ(①知る→②探究する→③行動する→④祝福する)を体験的に学びました。

冒頭に、岡崎礼奈さんのチームとビデオグラファーのコインチェス優茉さんが制作した動画「ルーツ&シューツを始める、4つのステップ」を視聴。そして、ルーツ&シューツのコミュニティマッピングを体験するために、架空の地域マップ(都市/山のまち/海のまち)を使い、それぞれのエリアに起きている課題を「人・動物・自然」の3カテゴリーに分けるワークを実施。そして、特に注目したエリア①〜⑥にある課題から、グループごとに最も解決したい問題を1つ選びました。

そして、選んだ課題に対して、「どんな資源が使えるか?」を考え、リソースカードから協力者や場所を選定。そのうえで、どのようなアクションを起こせるかを検討し、最後に「そのアクションによってどんな変化が起きるか?」を話し合い、ワークシートに記入しました。

そして最後は、ふりかえりや感謝を分かち合う“お祝い”が大切!!参加者同士で称え合いながら、互いのアイデアを共有しました。その一環として、全員に参加証書を贈呈し、ワークショップを締めくくりました。

19:30

集合写真 / 閉会

集合写真 / 閉会

「変化を願う人」から「変化を生み出す人」へと、一歩を踏み出すきっかけとなる時間になりました。

PHOTO: KAORI NISHIDA

共催

公益財団法人 五井平和財団 / Educators For Future / ブリティッシュ・スクール・イン・トウキョウ昭和

後援

国連広報センター / 駐日英国大使館

DAY 1

ユースたちの希望の種まき

Planting Seeds of Hope

6/12 (THU) 17:00 - 19:30

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